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横浜家庭裁判所 昭和38年(少イ)3号 判決 1963年3月28日

被告人 岩男浩

主文

被告人を懲役八月に処する。

但しこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人はストリップ劇団東京ポッポショーを経営しているものであるが法定の除外事由がないのに、昭和三五年三月下旬頃大阪市旭区千林森小路所在の寿座において、満一八歳に満たない児童であることを知りながら○月こと○本○子(昭和二二年一二月二二日生)をストリップショーに出演させる目的で雇い入れた上継続して全国各地の巡業地でストリップショーに出演させ、最後に昭和三七年一二月三一日から翌昭和三八年一月九日までの間、横浜市中区宮川町三丁目七〇番地所在の横浜国際劇場において、同女をしてストリップショーに出演させ、もつて児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて同女を自己の支配下に置いたものである。

(証拠の標目及び被告人の主張に対する判断)

一、大阪市××区長作成の○本○子に対する身上調査照会回答書

一、○本○子の司法巡査及び司法警察員(二通)に対する各供述調書並びに検察官に対する供述調書

一、押収にかかる雑記帳、金銭出納帳各一冊(昭和三八年押第二七号の一、二)

一、城戸忠近の司法警察員に対する供述調書

一、岩男マサ子の司法巡査に対す供述調書

一、田淵みずえの司法警察員に対する供述調書

一、証人○本○郎、同○本○子及び同浜本誠一の各尋問調書

一、被告人の司法警察員に対する供述調書二通、検察官に対する供述調書三通及び当公廷における供述

なお被告人は、本件につき被告人が○本○子を雇い入れた当時同女は既に男関係もあり、親も放任状態であつて純真無垢な娘でなく、その雇傭期間中同女の日常生活に意を用い、監督指導をしていたから、同女の心身に有害な影響を与える行為をさせたと考えない旨主張する。しかし、児童福祉法第三四条第一項第九号にいわゆる「児童の心身に有害な影響を与える行為」とは客観的に判断して児童の心身に有害な影響を与えることが明瞭な行為を指称し、その行為をさせる目的をもつて、その児童の意志を左右できる状態のもとにすなわち自己の支配下に児童を置いている者が前記有害な影響を与える行為であることを主観的に認識しているかどうかを問はないものと解すべきところ、前掲証拠によれば、被告人は児童である○本○子を自己のストリップ劇団のストリッパーとして雇入れ、同女らと起居をともにし自己の支配下に置き、被告人主張のようにその日常生活面においては相当の指導監督をしていたことは窺えるが、同女をストリップショーのソロに出演させる場合、全裸にさせ脱いだ衣裳をもつて股間を隠す程度にさせたことが認められるので、その点について前段説示のとおり客観的に判断すれば同女の心身に有害な影響を与える行為をさせたと認めるのが相当であり、その認定には同女の従前における素行保護者の監護状態如何により左右されない。よつて被告人の主張は理由がない。

(法令の適用)

児童福祉法第三四条第一項第九号第六〇条第二項罰金等臨時措置法第二条第一項(懲役刑選択)

なお刑法第二五条第一項

(裁判官 田中寿夫)

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